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現代日本に蘇るいにしえの祭儀! 古代ギリシャナイトを徹底レポート≪後編≫

2016年5月にnoteで書いたイベントレポート(再編集版)の後編です。前編を読んでいない方はまず

http://igacham.hatenablog.com/entry/2017/01/30/230801

をご覧ください!

昼の部とこんなに違う! めくるめく夜の部へ突入

実はこのイベント、先に紹介していた前編は昼の部で、今回は夜の部もあったのです!

夜の部はゲストも変わり、トーク内容は夜ならではの“オトナの古代ギリシャ”(笑)的な話題になり、濃密度がぐっとアップするんです!

 

冒頭の劇は昼の部と同じ内容なのですが、何度聞いてもプロの歌と演技にしびれます! 私はデルフォイに行ったことがあるので、かつて見た遺跡の情景とこの歌を重ね合わせ、押し寄せる“古代感”に軽く悶えます(笑)。あ~、ギリシャ行きたい……!!

そんな古代ムードに浸っていたかと思ったら、藤村さんがアポロン像と黒川さん(の依り代のカラス)を忘れてくるというハプニング笑!

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会場に笑いが起き、ほっこりムードに包まれます。ちょっとミスったとしてもこんな風に会場の空気を温かくできて、藤村さんは本当に人徳のある方だなぁと思います。

ここからは昼の部と同じくアポロンの紹介。同じお話なので既出のスライドが流用されているのかと思いきや、

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……違う!

昼の部と夜の部、スライドの内容が違うのです! 勿論テイストは同じなのですが、よく見ると内容は全く違うものです。上の写真はホメロスTwitterの昼の部、夜の部の比較写真。昼の部ではアポロンはキラキラ系の神と紹介されていましたが、夜の部では「殺す神」なんて少々物騒な呼び名になっています。

スライドだけでなく、お話も昼の部と全く違っていてライブ感満載な上、さらに輪をかけてアカデミックな内容に。

例えば、険しい山の麓に位置するデルフォイが何故海にもっと近いアクセスの良い場所に出来なかったのかというお話(海に近い方の山は昔から「水なし山」と言われる水の出ない土地で、人が居つくには適さなかったため)や、冒頭の劇の歌はピュトンを倒そうとするアポロンへの応援歌なのに何故アポロンの名ではなく「パイエーオン」の名が呼ばれているのかというお話(デルフォイに初めて来たアポロンの名前を現地の人が知らなかったため&既に居た医術の神パイエーオンをアポロンが倒し乗っ取っていたから!)など、昼の部では語られなかったことが次々とあふれ出てきました! きっと藤村さんからしたらまだまだ語り足りないんでしょうね……!

上はほんの一例ですが、このように昼の部・夜の部を差別化する工夫がなされているので、通して見ている人も新情報満載で全編楽しめます。失礼ながら「夜の部は1/3くらい昼と同じ内容かな~?」と思っていた私は、結局PC前にずーっと張り付いて離れられませんでした笑。

ヤマタノオロチvsピュトン

アポロンが死の穢れを清めている9年間、昼の部では古代中国の帝が参戦していましたが、夜の部では日本神話を専門にされている磯宮わかめさんがゲストとして登場。

わかめさんはTwitter上で「ギリシャ神話と日本神話、どっちがエロいか!?」などのテーマで藤村さんとやり合ってきた日本神話勢と呼ばれる方。しかし「日本神話勢」と呼ばれてはいるものの、なかなか強力な助っ人が現れず、結局藤村さんらに一人で立ち向かってヘトヘトになってしまうという、その空回り感が何だか愛嬌たっぷりな方なのです。

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ギリシャ神話の蛇神ピュトンに対抗しようと、日本神話が誇る大蛇ヤマタノオロチ(の風船!)と共に登場するわかめさん(上写真右)。

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が!!! 藤村さんのクサナギの剣(という名のマチバリ笑)でいとも簡単に退治されてしまうカラフルなヤマタノオロチ! わかめさん、「嘘だー!待ってー!!!」と絶叫……。頑張れ、わかめさん……!

※クサナギの剣:日本神話に登場する三種の神器の一つ。

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雅楽っぽい音楽が流れ、ギリシャ神話VS日本神話のディベートバトルが開戦です。

先攻はわかめさん。ゴムの塊となって散った大蛇の無念を晴らすべく、ヤマタノオロチの退治方法をラノベ風に説明し始めます。

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しかし光明神・アマテラスオオミカミを「アポロンとおそろ!」と言われたり、古代日本人を「土器を長らく作っていた方々……(笑)」などと言われたりと、色々と古代ギリシャ勢にちょっかい出されてしまって、何だか押され気味(苦笑)。Twitterのやりとりが具現化しているようです!

でもでも! わかめさんのハンパないヤマタノオロチ愛が伝わってきましたよ! 出雲にある斐伊川ヤマタノオロチ伝説のもとになったのでは!? という説は、伝説と現実がリンクするようでアガりましたし、下のヤマタノオロチイラストは前日制作とは思えないクオリティ! 素晴らしいです!

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続いて藤村さんパート。冒頭の劇にも登場したピュトンの魅力について熱く語ります。

魅力①かわいい

ゲームに出てくるモンスターのように猛々しい佇まいのピュトン。さぞ恐ろしい蛇神なのかと思いきや……

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かわいいらしいのです! このスライドはずるいですね笑!

ピュトンは実はそれほど大きくはなく、呆気なく倒せてしまえそうなプリチーなサイズ感。イベントのメインビジュアルのイラストはだいぶ盛っていたそうです。この時点でだいぶピュトンの印象が変わります笑。

魅力②実は女子

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藤村さん作のピュトン&アポロンの美麗イラストが登場! 冒頭の劇では妖艶なお姉さまがピュトン役を演じていましたが、正にあのイメージ通り、ピュトンは女性という衝撃の事実。ピュトンさんセクシー過ぎるしアポロンイケメン過ぎるし、色々と素晴らしすぎてPC画面の前で動揺しまくりな私。画力もあるなんて藤村さん凄すぎます。

魅力③妹もすごい!

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ギリシャ神話に登場する、頭が9つある水蛇・ヒュドラ。この怪物が実はピュトンの妹だというさらなる衝撃の事実! ヒュドラは人気があるのでしょうか、スライドが変わった瞬間会場で一際大きな歓声が巻き起こっておりました!

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ちなみにこの壺絵は、ヒュドラギリシャ神話の英雄ヘラクレスに倒されそうになっている場面で、カニが助けに来てヘラクレスの太腿を切ろうとしています。このカニはカニ座になったカニ。他の星座のように立派な神話はないけれども現在も12星座の一つとして君臨する、星座界で一番出世したといわれる、実は凄いカニなんです。

そんなエピソードからギリシャ神話の中では相当なヘタレキャラとして度々藤村さんから紹介されており、カニの話が登場した途端、会場は笑いと拍手の渦に……! カニはいい奴だし美味しいし、悪い要素ないね!という結論に至り、ピュトンvsヤマタノオロチの話は全てカニが持っていってしまったのでした。(笑)

古代ギリシャ語は”オトナ”の言葉で覚える!?

黒川さんモテモテの休憩タイムが終わると、皆様お待ちかね……“オトナの古代史”の時間がやって参りました!笑

まずはちょっと押され気味のわかめさんのために、わかめさんワンポイントコーナーがスタート!

わかめさんの持ちネタ5つの中から、会場のお客さんの挙手制でどのテーマを話すか決めるという内容。直接民主制なのは何だか古代ギリシャらしいですね。

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ずらっと並べられた際どいタイトルを前に、一気にどよめき立つ会場! 個人的には3番が気になりましたが、厳正なる選挙の結果、2番のお話に決定。

蛇が女性器の中に丸ごとすっぽり入ってしまい、挙句の果てに蛇の子まで身籠ってしまったという、何だか蛇に愛されまくりな女の人のお話です。この女の人、その後どうしたのかというと、女性器の中に合計36リットルの薬を流し込んで子供の蛇と最初に入った蛇を出し切ったとのことなのです。とはいえ話しているわかめさん自身、“あの中”に36リットルもの液体を流せるか!? とツッコみつつのお話でしたが(笑)。

わかめさんコーナー後はディベート再開! 今回の先攻は藤村さん。昼の部のアンケートで「古代ギリシャ語はどうやったら覚えられますか?」と質問をもらっていた藤村さん、その答えをここで披露して下さっています。

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猥語で覚える古代ギリシャ語!!!!!

騒然とする会場を前に、藤村さんが一つ一つ日本語訳を投下していき、その度に会場もTwitterも大わらわ笑。下ネタの力は絶大です。

「ポステー」と「ポスティオン」の違いは単語の最後に付く“イオン”という音で、これが付くとかわいらしい感じになるのだとか笑。この「ポスティオン」という単語、昼の部でおもしろ三国志さんが意味も何も知らずに言わされておりました……!!!

ちなみにこの時、Twitter上では「ピュギゾー」の日本語訳に対し、「隠れてない!」「伏せ字になってない!」などとコメントがあふれました笑。

発音が重要になる「ディアメリゼン」は会場の人全員で藤村さんの後に続いて復唱!!!笑 「ディアメーリゼイン」が正しい発音だそうです……! 何十人もの人間が一斉に「す○た!」と発音する様を見るのは、人生でそう何回もないと思います笑。

確かに、こんなマジカルワードたちなら活用とかも余裕で覚えられそうですね! 大学時代に活用で挫けてしまった古代ギリシャ語、また教科書を開きたくなりました。

ヒートアップする”ポスティオン”対決

後攻・わかめさんも負けじと「なんともいえないキーワードたち」をプレゼン!

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点線より上が古代ギリシャ語でいうポステーorポスティオン、下が女性のアレを指すそうです笑。古代ギリシャ語よりは奥ゆかしいと主張されていましたが、金田さんから「BL小説に出てくる!」と指摘を受ける表現もあり、なかなかに良い勝負だと思います。

続いて「古代の表現」というテーマでわかめさん先攻。

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ここまで直接的なものが出てきたら、もはや奥ゆかしさも何もありません! 「稚児之草紙」といわれるエロ壁画は、わかめさん自身でモザイクをかけてしまうほど笑。色白の方の人は、よーく見ると男の子! 少年愛は時代も文化も超えるのですね……!!!

石棒はわかめさん曰く新潟の物がおすすめとのことで検索をかけてみましたが、もはや“そのまんま”と言えるほど精巧な品々がずらりと現れました。気になった方は、「石棒 新潟」で検索してみて下さい……!

藤村さんはまだまだ持ちネタが尽きないようで次々とポスティオンネタを披露!

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なんと、インテリア化(笑)。写真は部屋の中で吊るすポスティオン型の風鈴で、“チンチン”と鳴る音からそのままチンチンナブラムという名称なのだとか! 音の表現方法は世界共通のものもあるのでしょうか……日本語とラテン語の脅威の一致に動揺を隠せません笑!

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ポスティオンを至るところに付けまくった、インパクトありすぎな裸マントの人の像も登場! できるだけたくさん生やせば魔除けになると考えられたそうですが、魔だけでなく何も寄ってこなくなりそうです……!笑

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続いてアスクレピオス神域の奉納物。医術の神・アスクレピオス神に、治癒した箇所をかたどって奉納したといわれている物で、どれも見事に“ケース”に収まっています。古代ギリシャでは“ケース”に収まっている方がほっそりしていて可憐で美しいと考えられたそうで、みんな理想形をかたどって奉納しています。

アスクレピオスには私も行ったことがあり、こういった奉納物の類も見てきましたが、“ケース”の有無までは流石に着目しておらず……着眼点の違いに脱帽です!(笑)

ポスティオン談義を繰り広げた後はアンケートタイム! 「アポロンの好みの女性は?」「アポロンの神殿を立てるベストな場所は?」など、藤村さんの回答だけでなく、会場の方の質問センスもキレッキレなのです!

最後は昼の部と同様アポロン戴冠式が行われ、「善良なる市民~!」の掛け声でイベントは終了。

 

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古代ギリシャを食べて聞いて歌って楽しむ古代ギリシャナイトの第3回目はこうして幕を閉じたのでした……! Twitter発のこのトークイベントは、Twitterの日頃のやりとりが具現化したような絶妙なやりとりや、アカデミック過ぎない親しみやすい雰囲気などが魅力的で、古代ギリシャ初心者から研究者レベルの玄人まで幅広い人が楽しめると思います。

いつか生であの場の空気を感じて、「善良なる市民!」の掛け声に参加できますように!

藤村さんはじめ、イベント主催者の皆様、楽しい時間を本当にありがとうございました!