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【仕事】吉見百穴の地下軍需工場跡で見た人間の痕跡

埼玉の遺跡・吉見百穴を取材しました!

小高い丘の斜面に古墳時代の横穴式古墳がぼこぼことあいた歴史スポットで、記事内ではこの無数の墓穴内部の様子を主に紹介しています。

しかしこの場所は古墳時代墓所だけでなく、丘の内部に太平洋戦争中の地下軍需工場跡もあり、もう一つの見どころとなっています。この軍需工場跡のことには今回記事内では触れられなかったので、取材後記としてこのブログに残しておこうと思います。実は、ちょっと意外なものが見られたのです。

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丘の内部に掘られた地下軍需工場跡は、太平洋戦争末期に作られました。

日本の航空機工場が米軍の爆撃を受けてしまい、新たに軍需工場を作れる場所を探していたところ、掘削に適した&空襲を避けられるベストスポットとしてこの場所が選ばれたのだとか。

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洞窟内には山の内部から冷気が吹き込んでいて、夏は天然クーラーとして涼みに来る人も多いのだそう。入口に入りかけただけで圧倒的な冷気に包まれ、真夏にコンビニやスーパーに入った瞬間を思い出すほどでした。

内部はほのかな灯りにぼうって照らされていました。外の売店でアイスを食べていた親子の声もいつの間にか遠ざかって、別世界のようでした。

最初に入った1本道をまっすぐ進むと、鉄柵で区切られた場所に辿り着きました。鉄柵にスイッチがあったので押してみると、鉄柵から先の洞窟内が50mほど灯りで照らされました!

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この洞窟内はすべて見学できる訳ではないのだといいます。洞窟の奥は崩落の危険があるので、現在公開されているのは全体の10分の1にも及ばないのだそうです。奥にはガイドさんも見たことがないという、労働者が使った風呂や井戸、貯水槽などがあるのだとか。

数秒経つとスイッチで点けた灯りが自動で切れてビビります(笑)。鉄柵の先が一瞬で暗闇に戻りました。その先を見たいような、見たくないような……人間に根源的な恐怖を抱かせる、飲み込まれそうな暗闇が目の前に広がりました。

信仰の証?

この洞窟の掘削に動員されたのは、3000~3500人の朝鮮人労働者でした。彼らは近くを流れる市野川の河原にバラック小屋を建てて住み、3交代でダイナマイトを使った突貫工事に従事したといいます。

洞窟内には物資が搬入される時に人が避けるために使ったと考えられるくぼみがいくつもありますが、ガイドさんがあるくぼみの前で熱心に語り始めました。

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なんでも、上の写真のくぼみが祭壇のように見えるとのことで、朝鮮人労働者の中のキリスト教徒が祭壇として使ったんじゃないか……と予想していると話してくれました。

確かに、他とは明らかに違う、人が手をかけて彫った独特のくぼみがありました。あくまでガイドさんの個人的な仮説なのですが、何かを祀っていたように見えなくもなく、妙に「そうかもな~」と納得して頷いてしまいました。

気になる”あの話”

昼夜を徹した過酷な労働を経て作られた洞窟には、人の“念”がこもっているような印象も受けました。編プロ時代の先輩が過去にここを取材で訪れていたのですが、その人が「あそこには何かいる」と語っていたことがずっと頭に残っていて、ガイドさんに突飛な質問をしてみたのです。

私「ここは、幽霊が出るんですか?」

ガイドさんの答えは意外でした。

「それが、朝鮮人労働者の中から死人は出ていないんです。だから出るとしたら古墳時代の人ですかねぇ。たまに拝んでいる女性とかいますよ」

私は心霊スポットに行っても何かを感じるタイプではありません。エジプトに旅行した時も、ピラミッドから王家の谷、博物館内のラムセス2世のミイラまで死者に会いに行きまくりだったのに、おぞましいものは何も感じませんでした。

しかしこの穴の中では、言いようのない気配があるように感じました。気にしすぎなのかも知れませんが。目に見えるものにも見えないものにも、人間がかつてそこにいた痕跡を感じる、とっても印象的な穴でした。

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ずっと暗い洞窟が続いていたので、出口が見えると安心しました(笑)。現実に戻ってきたような気分でした。

古墳時代の墓穴の記事もご一読いただけますと幸いです!