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音楽と料理で古代を体感! 音食紀行イベントに行ってきた

昨日・8/26(土)、音楽と料理で歴史を楽しむ音食紀行さんのイベントに行ってきました! 色々とカルチャーショックだったので、イベントの様子をまとめたいと思います。

 

そもそも音食紀行とは

私が音食紀行さんを知ったのは先月頃。ツイッターで、古代~近代まで世界中の歴史料理を再現する『歴メシ!』という本を知ったのが始まりでした。「何これぇぇ!」と異様なテンションでググり、著者である料理文献研究家・遠藤雅司さんと、彼が主催するプロジェクト「音食紀行」を知るに至りました。

音食紀行さんでは、テーマに即した時代・地域の音楽と料理を再現し、時代旅行・世界旅行を疑似体験するイベントを行っているそうです。なんと2013年から何度も開催しているようで、私が昨日参加した回は記念すべき第50回目でした。同人誌の販売も行っていて、先日のコミケにも参加されたのだとか。

リサーチの最中にイベントの告知を見つけ、一切迷うことなく参加ボタンをポチリ。事前に『歴メシ!』で予習すべきか悩みましたが、より新鮮な体験にするために、敢えて何も知らずに臨むことにしました。

古代の音色で開宴

今回参加したイベント名は「ヘレニズム アレクサンドロス大王の夢」。古代メソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマ、ペルシャがテーマです。山川出版の高校世界史教科書第1章「オリエントと地中海世界」がまるまる大好物なので、なんとも私得すぎる素晴らしい回です。

場所は都営三田線千石駅が最寄りの「カフェ灯菜(あかりな)」。18:15の受付開始時間より前から人が集まり始めていて、駅周辺や近所のコンビニに参加者らしき人を散見。期待感が高まっていきます。

f:id:igacham:20170827114927j:plain受付開始時間になると続々と参加者が入店。入口で参加費の支払いを済ませ、奥から順に詰めて座っていきます。

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温かな灯りに包まれた店内。このお店は照明器具の販売も行っているようです。

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着席するとスタッフの方が水を配ってくれましたが、アリストファネスの喜劇から考案した「古代ギリシャフレーバーウォーター」だそう。ブドウ、リンゴ、ミントなどが入り、デトックスウォーターのような爽やかな風味です。

参加者30人がそろうと、主催者の遠藤さんから乾杯の音頭が。古代ギリシャでは自分の”推し神”に乾杯して地面に酒をドボドボと流すそうなのですが、お店に迷惑がかかってしまうので(笑)、「皆様の英霊に乾杯!」に落ち着きました。

乾杯が済むと、店内の照明が落ち、古代音楽演奏会がスタート。演奏は竪琴奏者のひかるこさんです。白の衣装&冠&竪琴という、古代の陶器などに描かれていそうな雰囲気満点の装いです。

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竪琴の演奏だけでなく、伸びやかな歌声も披露してくれました。和音のないシンプルな古代ギリシャ音楽、どことなく聖歌を思わせる旋律の古代ローマ音楽などが奏でられる中、一番印象的なのは古代ギリシャ人・セイキロスの墓碑に刻まれた歌。墓に音符や歌詞が刻まれ、完全な形で残る世界最古の歌とされているそうです。30分の演奏会は、しっとりとした雰囲気で過ぎていきました。

続々登場する古代料理! 忘れられないのは悪魔の〇〇

ミステリアスな演奏が終わると、古代料理が次々と運ばれてきます。まずテーブルにやってきたのは、古代エジプトの無発酵パン。

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カムット粉とスペルト粉という、現代に復活させた古代小麦を使用。見た目はナンのようですがモチモチ感はなく、むしろパサパサ感が際立つあっさりめのパンです。ハチミツを合わせていただきます。

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主催者の遠藤さん。料理が運ばれてくる直前、こうして「次はこちらの料理をお持ちします!」とフライパンやボウルごと見せてくれます。ちなみに遠藤さんは「写真を撮る」ことをなぜか「激写」と表現していて、「どんどん激写してください!」を連呼していた姿が印象的(笑)。

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次に現れたのはサラ・カッタビア。古代ローマのチキンサラダで、当時は雪の中に入れて冷やしたそう。ショウガが効いていて、日本人が夏に食べたくなるようなさっぱり味です。

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このイベント中、最も会場を騒がせた問題児がこちら。クランベーという古代ギリシャの千切りキャベツで、これそのものは甘酸っぱく食べやすいのですが、仕上げにかける調味料「アサフェティダ」がとてつもなく曲者でした。

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「悪魔の糞」の異名を持ち、鼻に抜けるような硫黄に近い強烈な香りが、それまでの料理の味を一切忘れさせてくれました。手でつまんでふりかけたのですが、家に帰って手を洗うまでその独特のにおいが終始手から放たれていました……!

遠藤さん:「クランベー自体は日本人の味覚にも合うのですが、最後に加えるスパイスで『やっぱり古代ギリシャ人とは相いれない』と思ってしまうかも知れませんね!(笑)」

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参加者は歴史好きや料理好きなど、さまざまな年齢層・興味関心の人が集まっています。最初は知らない者同士なので多少よそよそしい感じがありますが、アサフェティダの1件で凄まじい味覚を共有し、自然と会話が弾んでいきました。

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アサフェティダの衝撃を大いに緩和してくれたのが、トロネ風サメのステーキ。(トロネは古代ギリシャのポリスの名前)ふわふわのサメ肉をコリアンダーなどの各種香辛料を絡ませて焼き上げた一品です。このイベント中、一番素直に「おいしい!」と好感触を抱いた料理でした(笑)。

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野菜や肉で満たされた胃袋を、優しく温めてくれたのが古代ペルシャのスープ・シクバージ。メソポタミア風の出汁、ハチミツ、ワインビネガー、牛肉を使い、古代オリエントギリシャ・ローマの食文化がぎゅっと凝縮された、正にヘレニズムな一杯です。

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最後に登場したのは古代メソポタミア風ガレット・メルス(写真が汚くてすみません)。ビールや水に、ピスタチオ、コリアンダーなどを入れた焼き菓子です。ビールを使うところがメソポタミアっぽくて良いですね!

ハチミツ使用率高し? 飲み物も個性派ぞろい

食べ物だけでなく、飲み物も複数種類登場しました。

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シュメールのニンカシ風ビール。シュメール人たちが女神・ニンカシに捧げていたというビールだそう。ビールにワイン、ハチミツ、ハーブなどを加えて作るそうなのですが、現代では酒造法に引っ掛かるので、今回はカクテルとして提供しているとのこと。苦味が少なく、するすると飲みやすい甘いビールでした。

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こちらは黄金色をしていますが、実は古代ローマの貴族に愛されたスパイス入りワインです。鍋で煮た白ワインにハチミツ、サフラン、レーズンを加えていて、ハチミツの甘味を強く感じます。黄金色なので貴族たちにもてはやされたのだとか。金持ちの考えることは昔も今も変わりません(笑)。

他にも、ワインビネガー・酢・水を使った古代ローマ兵の携帯飲料「ポスカ」(マジックではない笑)など、料理の合間を縫って多彩な飲み物が提供されました。甘い物を好む貴族趣味が反映されているのか、全体的にハチミツ使用率が高かったような印象です。

料理と音楽で古代の生活がぐっと身近に

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演奏会と食事会を含め、2時間半ほどでイベントは終了。今回の参加者は30人で、遠藤さんにわからないこと・聞きたいことを気軽に尋ねられるアットホームな距離感がほど良かったと感じました。

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会場では『歴メシ!』など書籍のほか、古代オリエント系の雑貨も販売。写真は歩鳥堂さんの作品で、昔エジプトやギリシャに行った時のお土産屋さんを彷彿とさせるラインナップでした。特にスフィンクスのデザインが素敵で、「スフィンクスってとってもセクシーなんですよ~!」と熱弁してくださいました! 物欲を刺激されるコーナーです。

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イベントの勢いそのままに、帰り際にようやく書籍を購入。ミーハー心満点に、遠藤さんにサインまでいただきました。これからじっくり読ませていただきます。

 

「音楽」と「食」は、人間の五感を使うものです。今回のイベントでは、歴史の教科書からはなかなか伝わりづらい、人間の営みをダイレクトに感じられました。顔を見たこともない、声を聞いたこともない古代人の、人間くさい部分に思いを馳せることが、歴史の楽しみの一つだと思います。

音食紀行の皆様、束の間の世界史旅行をご提供いただき、ありがとうございました!